チームの成長と向上を促すふりかえりの場を作るために意識していること

自分がスクラムマスターとしてふりかえりの場を設計するときに意識していることをまとめました。

1. ふりかえりを実施する目的を共有する

何のためにふりかえるのでしょうか?目的が腹落ちしていないと「ふりかえりの時間って無駄じゃないですか?」「ふりかえりの時間を削ってタスクを進めませんか?」といった提案が出てきます。自分もこのような提案をしていた1人です。

ふりかえりはチームが向上し続けるために役立つアクティビティですが、やらされ感が強いと期待した効果は得られません。ふりかえり以外のすべてのアクティビティに対しても言えることですが、何のために実施するのか目的を共有して、メンバーに納得してもらった上で参加してもらうと効果的な場を作ることができます。

2. ふりかえりの基本構成と時間を決める

何もない真っ白な状態からふりかえりを実施するのは初心者にとって難易度が高いです。事前にフォーマットを準備しましょう。自分は反復的ライフサイクルにおけるレトロスペクティブのステップの流れを意識して場を設計しています。

反復的ライフサイクルにおけるレトロスペクティブのステップ
反復的ライフサイクルにおけるレトロスペクティブのステップ

引用: アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

自分がチームのふりかえりで使用しているフォーマットはチームメトリクスと感情データを活用した「ふりかえり」の手引きで紹介しています。

世の中にはふりかえりのフォーマットが沢山あるので、それを使うのもいいと思います。

speakerdeck.com

ただし、採用したフォーマットによっては偏った意見しか出てこなくなるので注意が必要です。チームが安定するまでは、なるべく多くの情報が場に集まるフォーマットを採用することをおすすめします。

採用したフォーマットをチームにそのまま適用することが難しい場合もあります。そのときは参加者からの意見を取り入れて、チームに合わせたフォーマットを作っていきましょう。提案してもらった意見を取り入れて改善が進むと参加者の主体性が高まり、より積極的に意見を出してくれるようになります。

3. 感情データを拾う

問題発見のきっかけとなる感情データを場に集めるために、意見を出すための心理的なハードルを下げていきます。問題や課題は感情データから見つけることができます。

自分がハードルを下げるために取り組んでいることを3点紹介します。

  • チェックインの実施
    • ふりかえりの初めにメンバーの皆さんからこのスプリントにおける幸福度を教えてもらうなど、簡単に今のメンバーのお気持ちの共有から始める。
  • お気持ちを共有してくれたことに感謝
    • 否定ダメ・絶対。まずは勇気を出して共有してくれたことに感謝。
    • 「問題を見つけるきっかけは、あなたの感情共有から始まる」「メンバーの感情の共有はチームの成長のために役に立つ」ことを伝える。
  • 投稿してくれた内容へのフィードバック
    • コミュニケーションの本質はリアクション。Twitter のいいね!や、Slack のスタンプを返すぐらいの気軽さでいいので何らかのフィードバックをする。
    • 反応がない = 自分の意見が受け入れられていないと感じてしまうとますます意見が出てこなくなる。特に不安を抱えやすい新規メンバーには積極的にフィードバックする。

4. 事実確認を行う

「何 What」「いつ When」「どこ Where」「誰 Who」の4つの疑問詞を用いて質問をする

発生した問題事象の根本原因を探る分析手法として「なぜ Why」という問い掛けを繰り返す「なぜなぜ分析」がありますが、人間は「なぜ?」と聞かれると言い訳する(=最もらしい理由を作り出す)ようにできているため、使いません。

「どう How」の使用も避けます。「どうでした?」という質問は、それに対してどうとでも答えられるだけに、相手を戸惑わせたり、確信のない答えを強要してしまう可能性があります。

この4つの疑問詞のみを用いて事実質問を行う基本技能は、対話型ファシリテーションの手ほどきという本に記載されています。薄い本ですが、今日から使えるファシリテーションの技能が詰まった素晴らしい本なのでぜひ一度読んでみることをおすすめします。

定量データを確認する

ふりかえりで大切なのは感情データと事実データの組み合わせから解決する問題を発見することだと考えています。定量データは事実ベースの共通認識を醸成することに大いに役立ちます。

自分達のチームではカンバンボードのメトリクスや CI/CD ツールから得られる情報などの定量データを収集しています。

5. ネクストアクションを決める

次のスプリントで取り組みたいことを最低1つ決めます。適応やっていきです💪

6. すべての問題を解決しようとしない

ふりかえりの時間は限られているため、1度のふりかえりですべての問題を解決することはできません。もし時間の都合上1つの議題しか取り扱うことができない場合は、チーム活動のボトルネックとなる問題について話し合います。ふりかえりの時間内で結論が出ないときは、その議題について話し合うMTGをふりかえりの時間とは別で設定します。

メンバーに出してもらった意見の中には決めの問題もあります。決めの問題はオーナーシップを持って取り組む人をさっと決めてしまいます。成功したら Happy!失敗してもまたふりかえりで話せばいいので気負いせずに取り組んでもらいます。成長には適度なプレッシャー、失敗も大事な経験です。困ったらチームメンバーが助けてくれるので大丈夫です。積極的に頼っていきましょう。

7. ふりかえりのふりかえりをする

チームの成長と向上を促すために継続的にふりかえりの場を改善します。何を改善すると良いのかチームメンバーに聞いてみるのも1つの手ですが、参加者は議論に集中しているため、より良い場を作っていくことに対して意識が向かないことが多いです。そのため、+αでふりかえりの場をより良くしていくためには、スクラムマスターが参加者の行動を観察し、仮説を立てて検証する必要があると考えています。